転職で固定残業代の求人票を見るときは、給与の総額だけで判断せず、固定残業代が何時間分・いくら含まれているか、超過分が別途支給されるかを確認します。固定残業代があること自体が直ちに違法とは限りませんが、内容が求人票や労働条件通知書に明確に書かれていない場合は注意が必要です。
固定残業代の求人票は「給与の内訳」を見る
まず確認するのは、月給や年収の金額ではなく、基本給と固定残業代の内訳です。次の4点が求人票に書かれているかを確認してください。
- 固定残業代が含まれるか
- 何時間分の残業代か
- 固定残業代はいくらか
- その時間を超えた残業について、追加で支払われるか
たとえば「月給30万円(固定残業代5万円、30時間分を含む。超過分は別途支給)」と書かれていれば、給与の内訳と対象時間を確認できます。一方、「月給30万円、残業代を含む」だけでは、何時間分が含まれるのか、いくらが残業代なのか分かりません。
求人票で確認する固定残業代の見方
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 月給・年収 | 固定残業代を含んだ金額か、別の手当を含む金額か |
| 基本給 | 固定残業代を除いた金額はいくらか |
| 固定残業代の金額 | 何円が残業代として含まれているか |
| 固定残業時間 | 何時間分の残業に相当するか |
| 超過分 | 設定時間を超えた残業代が追加支給されるか |
| 対象となる割増賃金 | 通常の時間外労働だけか、深夜・休日労働も含むのか |
「みなし残業代」「定額残業代」「営業手当」などの名称でも、実質的に一定時間分の残業代を含む場合があります。手当の名前だけで判断せず、何の費用として支給されるのかを確認しましょう。
固定残業代の時間数から、残業の多さを推測する
固定残業時間は、会社が想定している残業の目安を知る材料になります。ただし、固定残業時間がそのまま実際の残業時間になるとは限りません。
たとえば「30時間分」の固定残業代が設定されていれば、毎月30時間の残業が必ず発生するとはいえません。一方で、固定残業時間が大きい求人は、通常の勤務時間だけでなく、一定の残業を前提に給与が設計されている可能性があります。
応募前に、次の点も確認すると実態を判断しやすくなります。
- 直近の平均残業時間
- 繁忙期と通常期の残業時間
- 固定残業時間を超える社員がどの程度いるか
- 定時退社や残業申請のルール
- 休日出勤や深夜勤務の有無
平均残業時間が求人票に書かれていない場合は、「月の平均残業時間は何時間ですか」「固定残業時間を超える月はどのくらいありますか」と具体的に質問します。
固定残業代の金額が妥当かを確認する方法
固定残業代は、対象となる時間外労働に対する割増賃金を下回らない金額である必要があります。求人票だけで正確な適否を判断するには、基本給、所定労働時間、固定残業時間、割増率などの情報が必要です。
確認するときは、次のように固定残業代を時給換算します。
固定残業代の時給換算額 = 固定残業代 ÷ 固定残業時間
ただし、この計算結果だけで適法かどうかを決めることはできません。残業代の計算では、月の所定労働時間や時間外労働の割増率も関係するためです。給与の内訳が不明な場合は、採用担当者に計算方法を確認してください。
固定残業時間を超えた場合は追加支給が必要
固定残業代が20時間分なら、20時間を超えた残業については、原則として超過分の割増賃金が別途必要です。「固定残業代があるから、何時間働いても追加の残業代は出ない」という扱いにはできません。
また、固定残業時間に達していなくても、実際に働いた時間に応じた賃金計算が必要です。固定残業代が含まれているからといって、残業を無制限に命じられるわけではありません。
深夜労働や休日労働については、通常の時間外労働とは異なる割増賃金が関係する場合があります。求人票に「深夜・休日分を含む」と書かれている場合は、何時間分をどのように含むのかを確認しましょう。
「月給が高い求人」と単純に比較しない
固定残業代を含む月給は、基本給だけの求人より高く見えることがあります。比較するときは、固定残業代を除いた基本給と、実際に想定される残業時間を分けて考えます。
たとえば、次の2つの求人があるとします。
| 求人 | 給与の表示 | 読み取れること |
|---|---|---|
| A | 月給30万円(固定残業代5万円・30時間分を含む) | 基本給相当は25万円。30時間分の残業代を含む |
| B | 月給27万円(残業代は別途支給) | 月給に残業代を含まない。残業時間に応じて別途支給 |
この場合、Aのほうが必ず有利とはいえません。実際の残業時間、残業代を除いた基本給、賞与の計算基準、各種手当を同じ条件で比べる必要があります。
応募前や内定後に確認する質問
求人票の記載が不十分なときは、次のように確認すると具体的な回答を得やすくなります。
- 「月給のうち、基本給はいくらですか」と聞く。
- 「固定残業代はいくらで、何時間分ですか」と聞く。
- 「設定された時間を超えた場合、超過分は別途支給されますか」と聞く。
- 「固定残業代に深夜勤務や休日勤務の割増分は含まれますか」と聞く。
- 「直近の平均残業時間と、繁忙期の残業時間を教えてください」と聞く。
- 回答内容が労働条件通知書や雇用契約書に反映されるか確認する。
特に、「残業代込み」「手当込み」「年俸に含む」だけで時間数や金額の説明がない場合は、口頭の説明だけで決めず、書面で確認しましょう。求人票と内定時に示された労働条件が異なる場合は、どの条件が正式な契約内容になるのかを確認する必要があります。
転職先として注意したい固定残業代の求人
次のような求人は、固定残業代の内容が不明確なため、応募前に追加確認が必要です。
- 月給だけが大きく表示され、基本給が分からない
- 固定残業代の金額が書かれていない
- 固定残業時間が書かれていない
- 「残業代込み」とだけ記載されている
- 超過分の支給について説明がない
- 固定残業時間が長いのに、平均残業時間の説明がない
- 面接などで「その時間を超えても追加支給はない」と説明される
記載がないことだけで違法と断定はできませんが、給与や働き方を判断する重要な情報が不足しています。回答を得られない場合は、他の求人と同じ条件で比較できない求人として慎重に判断してください。
転職時の固定残業代は「金額・時間・超過分」で判断する
固定残業代の求人票を見るときは、まず「固定残業代はいくらか」「何時間分か」「超過分は別途支給されるか」を確認します。そのうえで、基本給、実際の平均残業時間、深夜・休日勤務、賞与の計算基準を比較してください。
給与の総額が高いかではなく、固定残業代を除いた給与と働く時間が見合っているかを確認することが、転職先を判断するポイントです。







